日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P1-042
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御岳・亜高山帯針葉樹林における枯死材の現存量と分解過程
*勝又 伸吾大園 享司森 章土井 裕介武田 博清
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抄録

枯死材は他のリターに比べて分解が遅いという特徴をもち、森林生態系の物質循環や生物多様性に強く影響する。そのため、枯死材の現存量や分解過程を把握することは林分の長期的な物質動態を明らかにする上で重要である。特に亜高山帯針葉樹林では、寒冷な気候によって分解が抑制され、多くの枯死材が蓄積していることが予想されるので、枯死材について定量的に理解する意義は大きいと考えられる。しかし、亜高山帯針葉樹林の枯死材蓄積量についての知見は少ない。本研究は、亜高山帯針葉樹林において枯死材が林分の物質循環、特に炭素動態に与える影響を評価することを目的として、枯死材の現存量・炭素蓄積量を推定した。
調査地は岐阜県・御岳の標高2050mに位置する亜高山帯針葉樹林である。1haのプロットを設定し、DBH10cm以上の枯死材を対象として、材積の推定、腐朽度の記載を行った。腐朽度は枯死材の外観から6段階に設定した。各腐朽度の枯死材のサンプルを採集して密度・炭素濃度を測定し、材積に乗じて現存量と炭素蓄積量を推定した。
本調査プロットでは、544本、217.9m3の枯死材が発見された。密度は分解に伴って0.37g/cm3から0.11g/cm3まで減少したが、炭素濃度は約50%であまり変動しなかった。現存量は42.4t/ha、炭素蓄積量は21.3t/haと推定された。枯死材の炭素蓄積量は、地上部および林床有機物の炭素蓄積量のそれぞれ26.6%、103.2%に相当し、枯死材に蓄積している炭素量は林分全体の炭素蓄積の中で無視できない割合を占めていることがわかった。
発表ではこれらの結果に加えて、枯死材の分解過程における有機物の動態と予備的に行った分解速度の推定結果も示し、枯死材が炭素動態に与える影響について総合的に考察する。

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© 2005 日本生態学会
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