日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P1-048
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勝浦川河口干潟に優占するヤマトオサガニの摂餌および同化について
*大谷 壮介上月 康則水主 隆文北代 和也仲井 薫史上田 薫利村上 仁士
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抄録

本研究では日本全国に広く分布するヤマトオサガニ(Macrophthalmus japonicus)を対象種とし,徳島県勝浦川河口干潟においてヤマトオサガニを中心とした干潟における有機物の物質循環機能を明らかにすることを目的としている.そこで,摂餌活動,摂餌量および同化率を推定するモデルを作成し,その検証を行った.
ヤマトオサガニの摂餌活動と摂餌量は,現地調査より得たヤマトオサガニの一日の砂団子数,砂団子造粒速度および干出時間から摂餌活動時間ならびに干出時間中の摂餌割合を算出した.また,ビデオ撮影より摂餌活動時間および干出時間中の摂餌割合を算出した.これらを比較した結果,ヤマトオサガニは干出時間の48%を摂餌活動に当てており,その他の時間は巣穴掃除や甲羅干しなどの行動を行っていた.さらに,現地調査の結果を用いて一日の砂団子造粒数および砂団子造粒速度の重回帰式を作成した.一日の砂団子造粒数は地温と干出時間,砂団子造粒速度は地温を説明変数とした重回帰モデル式が作成され,現地調査の結果と概ね一致していた.
ヤマトオサガニの消化管内砂泥を光学顕微鏡下で観察を行った際,胃と腸に含まれる底生微細藻類の葉緑素が抜け落ちていた.また,干潟表層砂泥およびヤマトオサガニの消化管内砂泥のChl.a,Pheo.を測定した結果,干潟表層砂泥ではChl.aの占める割合が高く,Pheo.の割合が低かった.一方,消化管内砂泥ではPheo.の割合が高く,消化管内でChl.aの分解・消化が行われていることが示された.そこで,底生微細藻類の葉緑素があるものを生細胞,ないものを死細胞とした上で珪藻の同化率推定を試みた.その結果,ヤマトオサガニの珪藻同化率は37.6%であり,これらはデトリタス食者の同化率と同程度の値を示していた.

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© 2005 日本生態学会
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