日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P1-049
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落葉の分解と底生動物群集に与えるサケの死骸の影響;河畔樹種によってその効果は異なるか?
*鈴木 佳奈
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キーワード: サケ, 落葉, 底生動物, 栄養塩, 分解
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抄録

産卵サケの死骸の栄養は、分解や捕食により淡水や陸上の食物網に取り込まれる。本研究は、北海道内で普遍的に見られる分解速度の異なる落葉樹種3種(ヤチダモ、イタヤカエデ、ミズナラ)を用いて、落葉の分解速度ならびに落葉に付着する底生動物が、サケの死骸(流出する栄養塩)から異なる影響を受けるかどうか実験的に評価した。仮説は、1)サケの効果を受けて落葉3樹種の分解速度は促進する、2)サケの効果により落葉に付着する底生動物の現存量や密度が高くなる、である。野外実験は北海道大学苫小牧研究林にある人工水路6本(幅33cm、長さ8m)を用いて2003年11月_から_2004年4月にかけて行った。実験処理区は「落葉区」(落葉パックのみの対象区)と「サケ区」(落葉パック+サケの死骸を投入)の2処理区を設け、サケ区にはシロザケ1匹ずつを投入した。実験開始から15、30、45、60、75、95、115、135、155日後に3樹種の落葉の残存量と各樹種に付着していた底生動物の現存量や密度を計測した。60日をピークにサケの死骸からNO3やPO4などの栄養が溶出した。3樹種の落葉分解量に対する処理区の効果は、115日後と135日後において認められ、落葉の分解はサケ区で促進された。落葉に付着していた底生動物の総密度は、115日目において「サケ区」で高い傾向が見られた。底生動物の優占種は、採集食性(collector-gatherer)のユスリカ科幼虫(Chironominae)と捕食性のユスリカ科幼虫(Tanypodinae)であった。Chironominaeは、イタヤカエデの115日目とミズナラの115日目においてサケの効果を受けてその現存量が高くなる傾向が認められた。Tanypodinaeは落葉3樹種すべてにおいてサケ区でその現存量や密度が増加した。以上のことから、サケの死骸から流出する栄養塩の効果は、各樹種の分解過程や底生動物分類群によって異なることが明らかになった。

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© 2005 日本生態学会
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