日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P1-061
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ハワイ州オアフ島のマングローブ林における皆伐が稚樹の成長に与える影響
*榎木 勉
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抄録

ハワイ諸島には約100年前から砂防などの目的で導入されたマングローブ林が定着している。近年は、外来種による生態系への影響を懸念し、一部の地域では伐採による駆除の試みがなされている。本研究ではオアフ島のヘエイア州立公園内にあるRhysophola mangle L.が優占するマングローブ林において、皆伐が稚樹の生育に与える影響を調べた。 長さ40mのライントランセクトをマングローブ林から隣接する伐採後3年経過した伐採区にかけて、ラインの中央がマングローブ林と伐採区との境界になるように設置した。ラインは3本設置し、5m間隔で開空度と稚樹の個体数、サイズ、葉、幹、根への資源配分を調べた。 開空度は森林内の境界まで10mの地点から増加し、森林から離れるほど大きくなった。稚樹の密度は森林内から境界までは変化しなかった。伐採区では地樹密度は増加したが、境界からの距離が15m、20mの地点では減少した。個体サイズは森林内においても境界に近付くにつれて増加し、この変化は境界をこえると急激になった。 開空度の増加に伴い、稚樹のT/R比は森林内では徐々に減少し、境界を越え伐採区に入ると急激に減少した。これは葉重/個体重比と根重/個体重は増加するが、幹重/個体重比が減少するという変化に対応していた。SLAは森林内で境界に向かって減少し、皆伐区では一定であることから、葉重/個体重比の増加は森林内では葉数の増加よりも個葉の重量の増加によるものであり、皆伐区では葉数の増加によるものと考えられた。根重/個体重比の変化は森林内では小さく、皆伐区では大きかった。皆伐による急激な光資源量の増加により、着葉量が増えるが、相対的に減少する土壌中の利用可能な資源量に対応するため、根へ光合成生産物の配分が大きくなったと考えられる。 以上のように、天然更新した稚樹は、皆伐による光環境の変化に対応した資源配分を行いながら良好な生育を示しており、マングローブ林の除去のためには、皆伐に加え、天然更新の抑制の必要があると考えられる。

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© 2005 日本生態学会
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