日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P1-084
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沖縄島と久米島におけるオキナワコキクガシラコウモリのエコーロケーションコールの地理的変異について
*吉野 元伊澤 雅子松村 澄子
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抄録

現在、日本に生息するキクガシラコウモリ類は4種2亜種に分類されている。キクガシラコウモリ類は翼の形状から、持続的に長距離を飛翔することが得意ではなく、地域ごとあるいは島嶼などの個体群間で隔離が生じやすい。そのため、島嶼や地域ごとでエコーロケーションコールの周波数や前腕長に変異が観察されている。これまで、琉球列島における飛翔性哺乳類の地理的変異の研究は、島嶼間変異のみが考慮され、島嶼内変異については着目されていない。オキナワコキクガシラコウモリRhinolophus pumilusは、沖縄諸島の固有種であり、沖縄島と久米島、伊平屋島に分布している。沖縄島内におけるオキナワコキクガシラコウモリのエコーロケーションコールと前腕長に関して地理的変異の詳細を把握するため、沖縄島の11箇所の洞穴から捕獲したコウモリのエコーロケーションコールを録音し、定量的なデータに基づいて洞穴間で比較を行った。沖縄島内で本種のCFパルスの周波数には性的二型および明らかな地理的変異があり、種内の周波数変異幅は106kHzから120kHzとかなり広かった。また、沖縄島中部に位置する洞穴間は直線距離が約28kmしかないにもかかわらず、コロニーのCFパルスの周波数平均が5kHz以上も異なり、周波数変異はその2つの洞穴を境に中南部と北部の二群に大きく分けられた。前腕長も二群に分けられたことから、個体群自体が二群に分かれている可能性がある。本研究の結果から、琉球列島の飛翔性哺乳類の地理的変異を考える上で、島嶼間変異のみならず島嶼内変異を考慮する必要があることを示唆した。

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© 2005 日本生態学会
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