抄録
京都大学上賀茂試験地(京都市)のヒノキアカマツ林土壌のトビムシ群集は、リターの供給-分解過程を通じて生成される資源の量的・質的な異質性により、安定的に維持されていることが示されている(Takeda,H 1987)。森林土壌の有機物層においては、食物資源と住み場所資源が一体となっていることが系の特徴であるが、どちらの要素がトビムシの個体数を直接制限しているのかは明らかでない。トビムシ群集の優占種の大半は種は季節変化はあるものの一年を通じて腐植を中心とする雑食(腐植・菌糸・胞子・藻類)であり(Takeda H & Ichimura T 1983,Ponge 2000)、食物資源による制約を受けているとは考えにくい。そこで、我々は以下の野外実験を行った。有機物層を除去し、有機物をまったく含まない素材を埋設することで食物資源の極端に少ない環境を作成し、維持されるトビムシの種類と密度を調べた。種構成は、最優占種は周辺土壌と同様Folsomia octoculataだったが、地中性の小型種はほとんど含まれていなかった。表層性の種は周辺環境とほぼ同じ密度が維持された。総個体数は周辺土壌に対して一桁少ない密度が維持された。土壌に含まれる有機物量あたりの個体数は、周辺の土壌よりも高く、トビムシの個体数の直接の制限要因が食物資源ではないことが示唆された。