日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P2-008
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木曽山脈におけるハイマツ枯損跡の植生について
*最上 祥成土田 勝義
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抄録

近年、木曽山脈木曽駒ケ岳付近において、ハイマツの枯損が顕著となっている。ハイマツ枯損の状況や原因究明のための研究は多くなされているが、ハイマツ枯損跡地の植物の動態についての知見は少ない。高山帯での植物の生育は緩慢であるため、その動態を把握するには長期間の観察が必要であり、またその調査を継続することは困難である。そのため木曽山脈全山において散見される、より過去に生じたと考えられるハイマツ枯損跡に成立している植生について調査し、その特徴や立地条件との関連から動態の把握を試みた。檜尾岳周辺、木曽駒ケ岳周辺、将棋頭山周辺において点在する小規模な枯損部について植生調査及び立地条件として斜面方位、傾斜、標高、枯損部面積、土壌のA層深、また積雪や風衝の指標として枯損部周囲のハイマツ群落高を計測した。得られた調査結果を用いてTWINSPAN法による分類を行い、また分類された各群間における立地条件の相違について検討した。その結果、ハイマツ枯損跡に成立する植生の多くは、ハイマツ群落の林床に生育する植物種から構成されることが把握され、その種組成は標高によりやや異なり、コケモモーハイマツ群集の亜群集の分布域に対応して異なる傾向にあると考えられた。ハイマツ群落高の低い強風衝地と思われる一部の立地ではコメバツガザクラ、トウヤクリンドウなどハイマツ林床には生育せず、風衝地に見られる植物を多く含む植生が成立する傾向にあった。またハイマツの実生が生育している例は稀であった。

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© 2005 日本生態学会
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