日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P3-046
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キクメイシ科サンゴにおいて群体サイズと群体年齢が資源配分に及ぼす影響
*甲斐 清香酒井 一彦
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抄録

群体サイズと群体年齢が、サンゴの成長と繁殖への資源配分にどのような影響を及ぼしているのかを検討するために、ともにキクメイシ科に属し、ポリプのサイズと生息場所が似ているパリカメノコキクメイシGoniastrea asperaとシナキクメイシFavites chinensisの複数の群体それぞれから、単離ポリプ(1ポリプ)と小群体片(5から8ポリプ)を割りとり、遺伝的個体を識別した上で、成長率と放卵状況を観察した。単離ポリプと小群体片の成長率は、両種において単離ポリプが小群体片より有意に高かった。一方単離ポリプ及び小群体片ごとに、パリカメノコキクメイシとシナキクメイシの成長率の種間比較を行ったところ、小群体片ではシナキクメイシの方がパリカメノコキクメイシよりも有意に高い成長率を示した。さらに各群体片の放卵状況を観察した結果、パリカメノコキクメイシでは16群体中11の小群体片で放卵が確認されたが、シナキクメイシでは11群体中2の小群体片のみで、放卵が確認された。以上のことからパリカメノコキクメイシでは性的成熟後に、ポリプは周囲に開いた空間ができれば出芽への資源配分を増やして出芽し、結果として群体の成長率は増加するが、群体年齢に応じてポリプが開始した繁殖への資源配分を0にすることは無いと考えられる。一方シナキクメイシでは性的成熟後に、ポリプは周囲に空間ができれば資源を出芽のみに配分し、繁殖への資源配分を0にすると考えられる。つまりパリカメノコキクメイシでは、ポリプの出芽と繁殖への資源配分が主に群体年齢によって決定しているが、一方シナキクメイシでは群体サイズによって決定していると考えられる。

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© 2005 日本生態学会
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