日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P3-094
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分断化した二次林におけるコナラ堅果の生残過程:初期生存率と食害昆虫相
*田辺 慎一木村 一也大脇 淳中村 浩二
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抄録

コナラは温帯の二次林を代表する樹種であり、特に近年その多面的な機能が再評価されている里山林を中心に広く分布している。自家受粉による結実はほとんどなく、雌花や未熟堅果のほとんどが成長の初期段階で中絶により脱落する(初期生存率は0.08-0.3:Matsuda 1982)。コナラと同じブナ科のヨーロッパブナでは、自家受粉率が森林面積の増加とともに減少することから、コナラ堅果の初期生存率は森林面積の増加とともに上昇すると考えられる(仮説1)。コナラ堅果を利用する生物にとって、初期生存率の上昇は、利用可能な資源量の増加を意味する。未熟堅果を食害する昆虫に関して、その組成が季節的に大きく変化することが報告されている。堅果の初期生存率に対する面積効果は、特に発達後期の堅果を利用する昆虫類に大きな影響を及ぼすと予想される(仮説2)。  上記2つの仮説を検証するために、コナラ堅果の生残過程に対する木登り法を用いたモニタリング調査を行った。金沢大学角間キャンパス近郊の分断化したコナラ二次林の中から、面積の異なる8調査地を選んだ。モニタリングは、コナラ2ー5個体/調査地、6枝/個体、5当年シュート/枝の合計30個体、178枝、890シュート、2349雌花を対象とした。解析の結果は、上記2つの仮説を支持するものであった:1)未熟堅果の初期生存率(5月上ー中旬)は森林面積(IP/I < 0.0001)および枝基部直径(IP/I = 0.02)と正の関係を示す(ステップワイズ回帰rSUP2/SUP = 0.82, IP/I < 0.0001)、2)7調査地で発達初期(5月下旬ー6月上旬)の堅果の多くにタマバチによるゴールが観察された一方、発達後期(8月中ー下旬)のハイイロチョッキリの産卵およびシギゾウムシによる食害は面積の大きい3調査地に限定されていた。

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© 2005 日本生態学会
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