日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P3-176
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京都市深泥池における順応的管理による外来魚対策
*安部倉 完竹門 康弘堀 道雄
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抄録
外来種による生態系被害が深刻化し、在来生物群集の復元を目的とした外来生物除去が各地で行われるようになった。しかし、外来種の個体群抑制効果を個体群生態学的手法によって検証した例はあまり知られていない。本研究の目的は、1)外来魚の除去努力量と個体群抑制との関係について仮説を立て、2) 年齢層ごとの個体群抑制効果を検証し、3) 個体群モデルを用いて将来の個体群変動を予測することにある。深泥池では,1)〜3)の過程を繰り返すことにより、外来魚の捕獲努力量を調節する順応的管理を行いつつある。京都市深泥池(面積約9ha,周囲約1km)は,北方系と南方系の多様な動植物が共存するため,生物群集指定の天然記念物に指定されている。しかし、外来種の移入により、その生物群集は大きく変わってしまった。そのため、生物群集の保全を目的とし、1998年から外来魚であるブルーギル,オオクチバスの除去を継続している。オオクチバスは1998年に84尾と推定されたが、投網、エリ網による除去のみで2001年には37尾に減少させることが可能であった。ブルーギルは1998年に9,545尾から2000年に5,744尾に減少したが,2001年には5775尾で必ずしも減少しなかった。年齢別に見ると、2000年、2001年は2歳魚以上は減少しが、1歳魚は、1999年5145尾、2000年3984尾、2001年4199尾、2002年4205尾と増加していた。1歳魚の個体群を抑制するためには、投網、エリ網だけでなく、それ以外の方法でも除去する必要があると考えた。そこでモンドリによる捕獲を試行した結果、エリ網の1歳魚が捕獲される比率が72%に対し、モンドリは83%であり、また、モンドリの一作業あたりの捕獲数は、エリ網の10〜20倍である事がわかった。そのため、モンドリによる除去を行えば1歳魚の個体群を抑制できると仮定した。モンドリによる除去を行った2001年以降、2002年5387尾と2003年4707尾、2004年2921尾と減少した。また、1歳魚の個体数も2003年3813尾、2004年2410尾と減少した。内田の個体群変動モデルを適用した結果、2004年と同等の捕獲努力量(個体数の80%を除去)を継続すれば、2014年には100尾以下に抑制できると予測された。
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© 2005 日本生態学会
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