日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P3-177
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外来種カダヤシによるメダカへの影響と保全策に関する一考察
*田代 優秋上月 康則佐藤 陽一村上 仁士
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抄録
 1970年代にボウフラ駆除のため日本各地に導入された外来種カダヤシは,生息環境などがよく似た在来種メダカを攻撃,駆逐するといわれている.一方,関東や和歌山県では両種は住み分けするともいわれる.そこで,著者らはこれまでに1)両種混生水路における個体数,鰭の損傷状況調査,2)損傷原因の確認のためカダヤシの攻撃行動観察と混生飼育実験, 3)飼育実験前後における肥満度の変化の計測,4)尾鰭損傷メダカの耐流速実験などを行い,5)保全策として水田と水路をつなぐ小規模な水田魚道(以下,魚道)を設置することを試みた.ここでは,1)と5)について示す.
1)は,徳島市川内地区の農業水路において両種混生水路5地点で2003年5月から12月まで毎月1回,採捕調査を行った.その結果,混生水路ではカダヤシの個体数の割合が平均18.0%と低いにもかかわらず,平均72.7%のメダカが尾鰭に損傷を負っていた.
5)は,同地区の営農水田に水路幅が約20cm,水路長が約6m,傾斜角度が14°の魚道を2基設置し,2004年7月2日から31日まで遡上魚種,個体数,全長を毎日行った.魚道設置前の調査では魚道を設置した水路には,メダカが1.94N/m2(全長6-40mm),カダヤシが0.72N/m2(22-32mm)確認された.魚道を遡上したメダカは平均全長28.5mmで計64尾遡上していたが,カダヤシは全く遡上しなかった.これは,メダカは産卵期に積極的に水田などの一時的水域に遡上するものの,カダヤシにはそのような生態を持たないためであると思われた.このようにカダヤシが定着しメダカと混生している水路であっても,魚道を設置するとメダカはそれを利用し,水田が避難場所のように機能することが示唆された.
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© 2005 日本生態学会
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