抄録
日本のITSについて若干の歴史的概観をした後,第3開発分野である安全運転支援システムの普及が芳しくないことを示し,その原因の一つに安全運転支援システムのコンセプトに問題があることを示す. 従来のコンセプトはドライバの運転負荷を少なくする形式のコンセプトで,どちらかと言えば,自然科学者が作ったコンセプトであった.しかし,よく調べると,運転負荷が増える方が事故も少なくなり,燃費も良くなるというデータもあり,交通心理学者をはじめとする社会科学者がこの現象に注目している.交通事故は注意をすればなくなるという簡単なものではなく,統計的な現象としてとらえる方がよいという説明もなされつつある.こういった社会科学者の力とITSの技術者が結集して安全運転支援システムのコンセプトを早急に作り,システムの開発と今後普及を図るべきことを述べる.