電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review
Online ISSN : 1882-0875
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最新号
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表紙
目次
ごあいさつ
技術の原点
幹事団提案
  • —Unixにおけるレガシーな技術とモダンな技術の融合—
    山田 泰司, 高橋 純, 島田 裕, 池口 徹
    2024 年 18 巻 1 号 p. 7-28
    発行日: 2024/07/01
    公開日: 2024/07/01
    ジャーナル フリー

    NFS (Network File System) はUnixで用いられる分散ファイルシステムである.1990年代のUnixを用いた計算機ネットワークでは,どのマシンにログインしても各ユーザのホームディレクトリがNFS共有されることが通常であった.このようにローカルネットワーク内においてユーザのホームディレクトリをいつでも参照・共有できる環境は,計算機資源の有効利用,情報・技術の共有などのメリットを有している.一方,ストレージがHDDからSSDへと高速化された現在では,たとえ10 GbEのように高速な伝送速度をもつネットワーク規格を用いてもNFSファイル共有のデータ転送速度がボトルネックとなり,高速なマシンの性能を引き出すことは困難となる.そこで,SSDのアクセス速度をコンソールでは落とすことなく,ローカルネットワーク内でのユーザのホームディレクトリを共有できるネットワーク環境を構築した.具体的には,各マシンのホームディレクトリをNFSエクスポートするメッシュ型NFSホーム共有による分散型計算機ネットワークの構築を,モダンなUnixであるmacOSで実現した.本稿はその技術解説である.

レビュー論文
IT研究会提案
  • 和田山 正
    2024 年 18 巻 1 号 p. 29-41
    発行日: 2024/07/01
    公開日: 2024/07/01
    ジャーナル フリー

    本稿では,筆者らが提案したLDPC符号のための近接勾配復号法について解説する.本稿に関する論文 (Wadayama and Takabe, IEICE EA, no.3, pp.359–367, 2023) は,2022年度電子情報通信学会論文賞を受賞した.凸最適化問題を解くための近接勾配法は,スパース信号再構成などの逆問題を解く技法として信号処理分野では広く利用されてきているが,LDPC符号の復号問題への適用はこの論文にて初めて議論がなされた.提案法の核となるアイデアは,通信路に対応する負対数ゆう度と符号に対応する符号ポテンシャルエネルギー関数からなる目的関数に対して,近接勾配法を適用して反復最小化を行うことにより近似的最大事後確率復号を実現する点にある.負対数ゆう度関数を適切に変更することで,広範なクラスの通信路に対して提案復号法を利用することができる.計算機実験の結果,現代の無線通信システムにおいて重要なLDPC符号化MIMO通信路においてデファクトスタンダートである既存手法 (MMSE信号検出とビリーフプロパゲーション復号法の組み合わせ手法) と比較して,提案復号法は顕著な復号性能の改善を与えることが示されている.また,有色ガウス雑音通信路や非線形性を有する通信路など,効率的な復号法の構成が困難である通信路への適用についてもその有効性が実験的に示されている.更に,提案法は,テンソル計算を中心とした実装が可能であり,GPGPU (GeneralPurpose Graphics Programming Unit) やAIアクセラレータなどの深層学習に特化したハードウェアに適した反復構造をもつ.深層展開などの機械学習技術との親和性も高く,今後,実応用に関する研究の進展が期待される.

解説論文
BioX研究会提案
  • 鈴木 茂哉, 安田 クリスチーナ, 富士榮 尚寛, 阿部 涼介
    2024 年 18 巻 1 号 p. 42-55
    発行日: 2024/07/01
    公開日: 2024/07/01
    ジャーナル フリー

    Decentralized Identifiers (DID) とVerifiable Credentials (VC) は,ディジタルアイデンティティの新しい実装形態として注目されている.従来型のディジタルアイデンティティのモデルでは,アイデンティティサービスを提供する主体が,ユーザの同意の元,ユーザ情報を,その情報を必要としている主体に提供していたが,VCによるモデルでは,ユーザ自身が,自身に関する情報を提供できるようになり,ディジタルアイデンティティの繊細なコントロールを可能としている.このモデルの中心となるのは,データモデル,非対称鍵暗号,発行・検証プロトコルなどであり,技術開発と標準化が積極的に進められている状況にある.本論文では,VCによるモデルとそれをとりまく検討状況について,背景,標準化,関連プロトコル,応用事例,課題や論点について概説する.

US研究会提案
  • 長谷川 英之
    2024 年 18 巻 1 号 p. 56-70
    発行日: 2024/07/01
    公開日: 2024/07/01
    ジャーナル フリー

    遅延和(delay-and-sum : DAS)ビームフォーミングは,超音波アレープローブのトランスデューサ素子から得られたエコー信号を使用して超音波断層像(Bモード画像)を生成するために広く使用されている.しかし,遅延和ビームフォーミングによって得られる空間分解能とコントラストは,素子間隔などアレーの物理的な仕様によって制限される.このような制約を克服するために,最近ではディジタル及びプログラマブルな超音波システムの普及を受けて,適応型ビームフォーミングなどが活発に研究開発されている.一方で,開発された方法によって画像の特性が改善されているかどうかを定量的に評価することも重要である.現在,多くの適応型ビームフォーミング法が開発されており,これらはしばしば超音波画像の特性を変化させる.そのため,画質の定量的評価方法を改良する試みも行われている.この記事では,主に適応型ビームフォーミングと画質評価法の最近の展開について解説する.

CCS研究会提案
  • 浅井 哲也
    2024 年 18 巻 1 号 p. 71-78
    発行日: 2024/07/01
    公開日: 2024/07/01
    ジャーナル フリー

    1960年代に提唱された確率的コンピューティングのフレームワークを用いると,特定の算術演算器を極めて少ない素子で表現できるため,超並列・省電力ハードウェアが構成可能になる.ただし,できる算術演算は限られ,演算精度と演算時間のトレードオフの課題も残る.近年,算術演算が比較的限られ,かつ低精度でも“それなり”の性能を出せるAIの演算(推論・学習の演算)に確率的コンピューティングを適用する試みが行われてきた.AI適用において残る課題は,パラメータを保存するメモリとの界面(通常演算と確率演算のインタフェース)のオーバーヘッドが大きいことであるが,この問題についても近年解決の糸口が見えている.これらの技術を統合すると,AIの推論・学習に必要な全ての演算素子・メモリを「確率的インメモリコンピューティング」で計算できるエッジAIハードウェアの未来が描ける.本稿ではそれらの要素技術,課題・問題の解決策,統合AIアーキテクチャについて解説し,確率的インメモリコンピューティングの実AI応用について俯瞰する.

ICTSSL研究会提案
  • 西 正博, 小林 真, 新 浩一
    2024 年 18 巻 1 号 p. 79-87
    発行日: 2024/07/01
    公開日: 2024/07/01
    ジャーナル フリー

    豪雨による土砂災害が日本各地で頻発しており,地域住民の被害が後を絶たない.被害軽減のためには避難を促す仕組みが必要であり,我々の研究グループでは,土砂災害モニタリングシステムを地域住民と協力して構築し,赤外線カメラで撮影した画像を常時提供している.本論文では,土砂災害モニタリングシステムの概要を述べるとともに,より迅速な土砂災害検知を目的とした,画像解析による危険度の自動検知や電波を用いた土壌水分量の推定の取り組み,及び山間部における土砂災害モニタリングネットワーク構築のための研究開発について概説する.

ISEC研究会提案
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