抄録
多くのトラブルは,安全と危険との狭間,グレーゾーンで発生している.グレーゾーンの存在理由は大きく二つのケースに分かれ,一つは安全か危険かをユーザなどシステムの使用者が判断できない判断困難ケースで,それらに対しては安全保証と危険回避を使い分けた設計や情報提供が必要になる.二つ目の危険度のしきい値の差異により生まれるしきい値依存ケースでは,規則やルールの決め側と従う側など複数主体間での異なるしきい値の相互理解が必要となる.グレーゾーンを回避することは難しいため,むしろその存在を前提とし,グレーゾーンにてのリスク対応力向上を目指したシステム安全学の考え方を紹介する.