電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review
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副情報に遅延が生じる場合のWyner-Ziv符号化問題
−相関がずれた副情報を利用した非可逆圧縮−
松田 哲直植松 友彦
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2017 年 11 巻 1 号 p. 6-16

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抄録

Wyner-Ziv符号化は,複数の情報源に関する基本的かつ代表的な情報源符号化である.Wyner-Ziv符号化では,相関を有する二つ情報源からそれぞれ生起した二つの固定長系列の片方のみを符号器において符号化し,もう一方の系列を復号器における副情報として参照して,符号化された系列を与えられた許容範囲内のひずみを許容して復号する.従来のWyner-Ziv符号化では,副情報として参照される系列が遅延なく復号器に届くことを仮定していた.これに対して筆者らは,副情報に遅延が生じる場合のWyner-Ziv符号化を導入し,与えられたひずみの許容値に対する符号化率の下限を表すレート・ひずみ関数に対して,計算可能な形式の上界と下界を与えた.また,これらの上界と下界を利用することで,ひずみの許容値を固定したときに,遅延がない場合よりもレート・ひずみ関数が真に大きくなる場合が存在することを明らかにした.本稿では,副情報が存在しない場合のひずみを許容する情報源符号化とWyner-Ziv符号化に対する既知の成果を紹介した後,筆者らが示した上記の成果について解説する.また,ひずみの許容値を固定したときに,遅延がない場合よりもレート・ひずみ関数が真に大きくなる情報源の例を紹介し,この情報源に対するレート・ひずみ関数の数値計算例を示す.

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© 2017 一般社団法人 電子情報通信学会
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