電力システムに再生可能エネルギーが大量導入されると,天候不順など予期せぬ事態に対応するための調整力(予備の電力)の役割がこれまで以上に大きくなる.調整力としては,速応性の良い発電設備や蓄電池に加え,需要側からの「デマンドレスポンス」に大きな期待が集められている.デマンドレスポンスとは,アグリゲータと呼ばれる,需要家と電力会社(若しくは,電力市場など)の仲介役が,報酬と引き換えに参加者(需要家)に電力消費を抑制させて需要量を減らす仕組みである.需給バランスの観点から見れば,需要量を減らすことは,実質的に発電所と同等の機能を果たすことになるため,それよって得られる電力はネガワット(負の消費電力)と呼ばれる.デマンドレスポンスによって品質の良いネガワットを得るためには,個々の参加者が所定の量のネガワットを供給することが重要であるが,現実には,機器故障などの理由により,それができない参加者が現れることが想定される.それゆえ,アグリゲータには,そのような参加者を検出する機能,すなわち,参加者の診断技術が求められる.本稿では,そのようなデマンドレスポンスの実施診断について解説する.特に,最近開発されたスパース再構成に基づく実施診断の方法について説明する.