電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review
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TL研究会提案
人工知能と芸術
―試行を元にしたヒトの認知と表象の理解―
迎山 和司
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2022 年 15 巻 4 号 p. 281-290

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抄録

意味を理解して図像を補完することができるのはヒトだけである.その能力の発現に言語能力は深く関わっているようである.文字の発明後,太古のヒトが描く洞窟画は,バイソンや鹿といった実際にいる生き物から,神や精霊といった空想の生き物が多く描かれるようになる.これは記号的絵画といえる.絵画は文字より感情を喚起させることに優れている.そして,記号的絵画を人工知能で分析して生成することは,ヒトの感情認知の理解につながる.このような研究手法をAnalysis and Synthesis(分析と生成)と呼ぶ.この手法で,空想の生き物やマンガを描く人工知能ができた.今後この試みは,絵画が生成する意味そのものから,意味によって喚起される感情を対象とする時期に来ているのかもしれない.分析と生成を行って確信したが,絵画は感情を表現するための「言語」といえる.言語が文法をもつことが必然ならば,その文法を駆使して込められた欲求が洞窟画からマンガに連なる根源であり,ヒトの感情を芳醇に喚起させる感動なのである.

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