2023 年 17 巻 2 号 p. 116-125
本稿では,高次元信号,特に画像データに対する効果的で系統的なデータ駆動型のスパースモデリング手法として畳込み辞書学習を概説する.計測技術の発展とともに多様かつ膨大なデータの取得が可能となった.同時に,信号の推定や予測の高性能化への要求が高まっている.高性能な信号の推定や予測の実現には,対象となるデータを効果的に表現できる生成モデルが必要である.本稿では,領域知識を反映しやすい信号生成モデルの一例として,フィルタバンク理論を適用した畳込み辞書の設計法について解説する.同理論を利用することで,Givens回転操作やシフト操作,バタフライ操作など複数の基本的な局所操作の組み合わせにより,ユニタリ性やフィルタカーネルの対称性などを保持する畳込みネットワークを構築できる.畳込み辞書学習と学習辞書による画像近似の例をとおして,同手法の有用性を示す.