2026 年 20 巻 2 号 p. 60-74
本稿は,削除誤りと挿入誤りを訂正するための符号理論を,古典符号理論と量子符号理論の両面から解説する入門的レビュー論文である.まず,削除球・挿入球のサイズ,編集距離(Levenshtein距離),t-削除訂正とt-挿入訂正の同値性,冗長度の上界・下界など基本的な性質を整理する.次に,最適な冗長度log2n+O(1)と線形時間復号を実現するVT符号を中心に,Monotone符号・Tenengol'ts符号など単一削除訂正符号を解説する.続いて,Helberg符号,2削除訂正符号,Brakensiek–Guruswami–Zbarsky符号,Haeupler–Shahrasbiの同期文字列を用いた構成など多重削除訂正符号を概観する.更に,BAD誤り符号・二次元配列符号・形式検証など削除誤り研究の広がりを紹介する.最後に,部分トレースとして定式化される量子削除誤りを扱い,NH条件に基づく量子単一削除訂正符号の設計法,最短符号長n=4の4量子ビット符号,置換不変量子符号による多重削除訂正,量子リード・ソロモン符号からの多重削除符号構成を解説する.