抄録
日本は世界で最も超音波による骨粗鬆症診断が盛んな国である.骨粗鬆症診断に関して,米国国立衛生研究所(National Institute of Health:NIH)は2000年のコンセンサス会議で「骨質(Bone Quality)」を定義した.この骨質とは骨のマクロ・ミクロな構造や,材料物性,マイクロクラックなどの骨の強度に関与する様々な要因の総称である.超音波法による骨診断は骨中を伝搬する音波の伝搬速度や伝搬減衰の情報を引き出してくれる.これらの情報は骨質,特に骨の弾性的性質にも依存している.このような視点のもとで,本稿では骨粗鬆症の初期症状が現れやすい海綿骨部位を取り上げる.特に,縦波超音波の興味深い伝搬現象とその骨構造(異方性)との関係について述べ,この現象を利用した新しい超音波骨評価法について紹介する.