抄録
これまでほぼ50年間にわたって主に保全性理論の研究に従事し,2010年までの研究結果をまとめて3冊の本(1)~(3)を出版した.4冊目の本(4)は,信頼性理論を学ぶためには確率過程の修得が不可欠であり,そのための教科書として書かれており,この本の全ての例題が信頼性の諸問題から引用されている.更に,近年システムが複雑化,大形化するに連れてランダム化され,ランダムモデルの構築が必要となった.これらの諸問題を理論的に解決するため,去年5冊目の本(5)を出版した.保全性理論は50年前の1965年Barlow and Proschanによって出版された本(6)によってほぼ確立された.本論文では,大きく分けてBarlowの本から2010年までを過去として振り返り,それからの5年間を現代として本(5)の一部を紹介し,未来として現在研究中の問題を累積損傷モデルを例に挙げて提案する.分かりやすくするため,取替問題として扱うが,取替を予防保全,年齢取替を定期取替と置き換えても内容はほとんど変わらない.