抄録
本稿では,誘導視覚失認(Motion Induced Blindness, MIB)の発見と各種の発展研究,現象分析およびモデル化,また生理学的機序研究の経緯を概観する.同現象を研究するにあたりその基礎となる視覚暗点(Blind Spot: BS)における視覚充填(Filling-In: FI),人工的視野欠損(Artificial Scotoma: AS),また一般に視覚失認現象(Visual Blindness: VB)の知見をまとめる.さらに,最近の筆者等の運動誘導失認に係る研究についてまとめる.一般に視覚失認の研究は視覚刺激が意識に上り「見えた」と気付くという最も基本的な視覚機能を解明する手がかりを与えるものであり, 心理学・生理学また認知科学さらに哲学の観点からも興味深い研究である.