実験動物
Online ISSN : 1884-4170
Print ISSN : 0007-5124
ISSN-L : 0007-5124
ウサギにおける瀉血性高脂質血症に対する二種の食餌条件の影響
村田 正弘
著者情報
ジャーナル フリー

1972 年 21 巻 4 号 p. 233-238

詳細
抄録
最近, ハイポキシアの生体に及ぼす生理学的意義について関心が高く, 実験的ハイポキシアを動物に作成する試みは多い。その中で瀉血性貧血によるヘミックハイポキシアは, 他のハイポキシアの形態 (減圧, 毒物等による) に比較して外的環境条件が正常に維持されるので比較的緩和で, したがって実験動物を長期間生存させることにより生体に対する影響を観察することが可能であるという利点をもつ。そこでヘミツクイポキシアがもたらす高脂質血症を指標として, ハイポキシアによる生体組織の損傷・破壊を防止・修復するに役立つある種の薬剤の効果を検定する方法の開発を企画し, 小型の実験動物に比較して瀉血を大量に連続的に行えるウサギに, 短期間に瀉血性高脂質血症を作成する再現可能な実験条件を検討した。生化学的試験により, 血清脂質量はハイポキシアの進行がある限界以上に達すると急上昇すること, 上昇する脂質は食餌性脂肪の流入ではなく, 中性脂質が主であることがわかった。さらに, 組織化学的観察の結果も参考にして, 瀉血性高脂質血症が生体全組織でのハイポキシアによるという従来の考えを支持した。また, 同腹のウサギを二種の食餌条件で分けて飼育して, 同一の瀉血を行ない脂質量を比較した結果, 食餌条件が脂質量と深い関係を有することを見出したので, 飼育条件を一定にした上で, 改良した瀉血方法, 及び確実な脂質定量法を適用すれば, 瀉血性高脂質血症を生体内の実験的ハイポキシアの進行・抑止の指標として使用することが可能であり, 薬剤の効果を検定する手段として応用できると考えられる。
著者関連情報
© 社団法人日本実験動物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top