抄録
唾液腺涙腺炎 (SDA) 様疾患罹患ラットの顎下腺組織から, マウス脳内接種法によりM株, およびラット腎培養細胞 (PRK) 接種法により930-10株を得, これらの分離株につき, ウイルス学的に検索を加えた。その結果, これらの分離株がコロナウイルス群に属し, ラット唾液腺涙腺炎ウイルスと同一のものであることが明らかとなった。分離株の諸性状は, 既知のSDAウイルスのそれと概ね一致した。さらに今回の検索において, 下記のような知見が得られた。すなわち, 1) SDAウイルスのenvelopeには長短2種類のSurface projectionを持つ。2) われわれの分離株である930-10株とSDAV681株の間に抗原性の違いがあることが交差中和反応で明らかにされた。3) SDAウイルスの増殖には35℃が適していた。4) DBT細胞では増殖しない, などの点である。