抄録
唾液腺・涙腺炎の集団発生から得た100匹のラットを病理学的に検索した。臨床および肉眼所見と一致して, 病理組織学的変化は唾液腺 (顎下腺および耳下腺) およびハーダー腺に主として認められた。これらの腺組織における病変は間質における高度の漿液性炎を伴う導管および腺胞の上皮細胞の退行性変化で特徴づけられ, 感染の末期には導管上皮の扁平上皮様化生が普通に観察された。このように, 唾液腺およびハーダー腺の病変は本質的にはほぼ同様であったが, 2, 3の点で異なっていた。すなわち, 唾液腺では一次的に障害されるのは導管の上皮細胞であり, 腺胞の上皮細胞は間質における炎症性変化の進展に伴って二次的に障害されるのに比べて, ハーダー腺では導管および腺胞の上皮細胞がともに一次的に障害された。また, 修復過程における結合組織要素の関与の程度は唾液腺と比較してハーダー腺でより顕著であり, ハーダー腺の大部分の領域は活発に増殖する間葉系細胞によって置換され, 腺胞本来の構造はほとんど識別出来なくなっていた。