Experimental Animals
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センダイウイルス不活化ワクチン投与ラットにおける血清抗体の産生と母仔移行
津久井 誠伊藤 宝務多田 檀中田 貢宮嶌 宏彰藤原 公策
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1981 年 30 巻 3 号 p. 275-281

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抄録
Tween80―エーテル, ホルマリンおよび紫外線で処理したセンダイウイルス不活化ワクチン (Sv-V) を成熟ラットに投与し, 血清抗体 (HI) の動きを観察して以下の知見を得た。
HI抗体価と投与したSv-Vの血球凝集素価 (HAU) との間に用量相関が認められた。すなわち, Sv-V105HAUを1回皮下投与後7日には抗体が検出され, 以後, 抗体価は上昇して21日後には最高値に達し, 200日後まで低下することはなかった。その後, 抗体価は徐々に下降したが, 投与後462日においても検出可能であった。103および104HAU皮下投与では抗体は10日後に検出され, 以後, 投与量に相関した抗体価を示しながらほぼ105HAU投与群同様に推移したが, 402日後には検出されなかった。雌雄間で抗体産生能に差はなく, Sv-Vの静脈内 (i.v.) , 腹腔内 (i.p.) , 筋肉内 (i.m.) , 皮下 (s.c.) 1回投与群の間に有意差は認められなかった。すなわち, Sv-V 105HAUをi.v., i.p.投与した場合は4日後に, i.m., s.c.投与の場合には7日後から抗体が検出されたが, 投与14日以降における抗体価はi.v., i.p., i.m., s.c.投与群間に差異は認められなかった。鼻腔内 (i.n.) 投与ラットでは投与21日後に抗体が検出されたが, 他の投与経路と比較して低値であった。Sv-Vを14日間隔で2回投与したところi.p., i.m., s.c.とも, 単回投与にくらべ高い抗体価が得られた。
Sv-V2回投与により産生された抗体は, 母乳を介してよく移行したが, 経胎盤移行は顕著ではなかった。すなわち, 母親の抗体価が高値であっても, 胎仔あるいは新生仔血清の抗体価は低かった。しかし, 高い抗体価を有する母ラットから哺乳中の1~3週齢ラットの血清抗体価は母親の抗体価と同値を示した。その値も離乳 (4週齢) 後は速やかに低下して10週齢では検出されなかった。
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© 社団法人日本実験動物学会
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