Experimental Animals
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マウスのブドウ球菌性皮膚炎の発生例について
田村 弘桑水 郁朗田島 優清水 晃木村 重二木 力夫前島 一淑佐藤 儀平
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1985 年 34 巻 2 号 p. 147-154

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抄録

JCL-ICRマウスの加齢のための飼育コロニーに発生した皮膚炎について, その発生状況ならびに細菌学的および病理学的検索を行い, つぎの知見を得た。皮膚炎の発生は1975年12月頃からはじまり, 翌年3月には雄48.3% (577/1195) , 雌2.4% (15/636) の発生率であった。皮膚炎の好発部位は腰から尾根部, 包皮, 耳根部から下顎および眼険から頬の皮膚であった。皮膚病変部の肉眼所見は糜爛, 潰瘍, 痂皮形成を主徴とする慢性炎症像を呈していた。また, 病理組織学的観察では表皮層はほとんど欠除し, 真皮層は壊死, 崩壊または脱落しており, 該部には核の破片および好中球の浸潤, 無構造でエオシンに淡染する漿液層の形成がみられ, その表面にブドウ球菌の小集塊が散在していた。病変が皮下織におよぶものや慢性に経過した例では, 好中球の浸潤を伴う線維性肉芽組織を形成していた。細菌学的検査では, 検索したマウス115匹全例の皮膚病巣部等からStaphylococcus aureusがほぼ純培養状に分離された。また, 分離菌の約107個をJCL-ICRマウスに皮下接種したところ, 自然発生例と同様の皮膚炎をおこした。塩酸クロールテトラサイクリンを1週間飲水投与して治療を試みたところ, 軽症例では症状は漸次軽減したが, 重症例では効果がなかった。以上のことから, 本皮膚炎はS.aureusに起因した疾患であると推定された。

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© 社団法人日本実験動物学会
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