Experimental Animals
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カニクイザルのプロラクチンの測定とその血中濃度におよぼすケタミン麻酔の影響
吉田 高志鴻野 操横田 絹江長 文昭本庄 重男
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1985 年 34 巻 2 号 p. 165-171

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抄録

まずヒト・プロラクチン測定用の放射免疫測定法 (RIA) キットのカニクイザル・プロラクチン測定への適用の可否を, カニクイザル下垂体, および, 妊娠20週齢のカニクィザリ母体血清, 羊水を用いて検討した。これらカニクイザル由来標品に対し, 本キットは, 妥当な用量反応性を示すとともに, ヒト標準標品との間に, 良好な平行性を認めることができた。このことから, 本キットは, カニクイザルのプロラクチン測定に適用できる, と判断した。
次に血中プロラクチン濃度におよぼすケタミン麻酔の影響について検討した。すなわち, 20頭の野生由来成熟雌カニクイザルを用い, 3回の実験で, 全ての動物に対し, 生理的食塩水投与 (0.1ml/kg体重) , ケタミンの低用量投与 (5mg/kg体重) および高用量投与 (15mg/kg体重) を, 実施した。ケタミンの低用量投与であれ, 高用量投与であれ, 約半数の動物では, 血中プロラクチン濃度は, 投与後, 20分までは顕著に増加を続け, その後, 減少に転じた。しかし, 残る半数の動物では, 血中プロラクチン濃度に著明な変化は認められなかった。放射受容体測定法 (RRA) で, 血中黄体形成ホルモン (LH) 濃度も同時に測定したが, ケタミンによる影響は認められなかった。ケタミンに対するカニクイザル下垂体のプロラクチン分泌の反応性における個体差が, どのような機構によって生ずるのか, という問題は, 今後に残された問題である。ともあれ, サル類を用いた従来の報告では不明確であったケタミン麻酔と血中プロラクチン濃度との関係が, 本研究によって, かなり明確にされたものと考えられる。

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© 社団法人日本実験動物学会
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