Experimental Animals
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カニクイザルの血中インスリン濃度およびアルギニン負荷試験による膵機能検査
櫻井 忠勝田 晨陸吉田 高志
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1988 年 37 巻 1 号 p. 53-58

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抄録
カニクイザルのインスリンの標準値を決定するとともに, 膵機能検査法としてのアルギニン負荷試験 (ATT) のカニクイザルでの有用性について検討を加えた。98頭の野生由来成熟雌動物のインスリンを測定し, 第三4分位数を求めた結果, 75μU/ml以下を標準値と定めた。年齢が明確で, 健康かつ肥満していないと判断した育成の成熟雌カニクイザル15頭 (6~8歳) を用いてATTを行なった。これらの動物はIVGTTによって耐糖能はすべて正常と判断されたものである。しかし, インスリンの0分時の値より75μU/ml以下の標準値であった低値群 (n=7) と75μU/ml以上の高値群 (n=8) とに分類された。低値群と高値群との間で, グルコースおよびインスリンのアルギニン投与前 (0分時) の値はほとんど差がなく, アルギニン投与後グルコースは両群でほぼ一定の値が保たれた。また, 低値群でインスリンはアルギニン投与後30分間ほど若干の上昇傾向を示した。他方, 低値群のグルカゴンには顕著な増加が認められた。しかし, 高値群ではグルカゴンは低値群と同様に増加を示したものの, グルコースおよびインスリンは明らかな減少を示した。以上の結果より, ATTはカニクイザルでは膵臓α細胞のグルカゴンの分泌機能試験としては有用であるが, β細胞のインスリン分泌機能試験としては不確実なものであると結論された。
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© 社団法人日本実験動物学会
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