Experimental Animals
Online ISSN : 1881-7122
Print ISSN : 0007-5124
大型と小型のスンクス (Suncus murinus) 2系統間での正逆交配の試み
―雌雄体重差が繁殖成績に及ぼす影響―
石川 明山縣 高宏並河 鷹夫
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1991 年 40 巻 2 号 p. 145-152

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抄録
バングラデシュ産大型スンクス (Suncus murinus) を起源とするBAN系統と長崎産小型スンクスを起源とするNAG系統間で交配実験を行った。12個体のBAN雌 (平均体重87.9g) と11個体のNAG雄 (52.3g) 間で合計16回の交配を試みたところ, BAN雌のNAG雄に対する激しい攻撃行動が観察された。交配期間中, BAN雌はケージ内に備え付けられた巣箱の中にとどまっていたが, NAG雄は巣箱の外にとどまっていた。交配終了後約16日目に触診による妊娠鑑定を行ったが妊娠雌は1個体も発見されなかった。一方, 8個体のNAG雌 (34.2g) と6個体のBAN雄 (145.9g) 間での合計11回の交配のうち6回から合計雌8, 雄8個体のF1雑種を得ることができた。得られたF1雑種は雌雄共にほぼ正常な生存・繁殖能力を示した。また, F1, F2, 戻し交配世代には, 外部形態, 行動などの異常は観察されなかった。F1, F2と両親系統を用いた種々の交配において, 雌の体重が雄の体重とほぼ同じか, 軽い場合に限り仔孫が得られた。一般に, スンクスの成体体重には, 雄43.5gから147.3g, 雌26.0gから82.0gの地理的変異が報告されているが, 雄の体重は雌の体重よりも約1.7倍重い。したがって, 雌雄の体重差が交尾排卵動物であるスンクスの交尾の成立に強い影響を与えていることが示唆された。
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© 社団法人日本実験動物学会
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