我々は, 以前に, バングラデシュ産大型スンクス (
Suncus nurinus) を起源とするBAN系統と長崎産小型スンクスを起源とするNAG系統間の出生後における体重成長を比較し, 両系統間の120日齢成体体重差 (BAN雄135.3g, 雌82.0g; NAG雄52.9g, 雌34.2g) の主因がBAN系統のNAG系統よりも約2.5倍長い直線体重増加期間およびこの期間の約1.5倍大きい成長速度によることを報告した。そこで, 両系統間から得られたF
1雑種の生後5日齢から120日齢までの体重成長を調査し, 上述した両親系統のそれらと比較した。これらスンクスの成長曲線として, 一次回帰直線と一分子反応曲線を組み合わせたものを用いた。F
1雑種の成長曲線は雌雄共に両親系統のおよそ中間に位置し, 120日齢平均成体体重は雄86.0g, 雌51.7gであった。F
1雑種の成長期間は両親系統のそれとほぼ一致し, 雄約60日間, 雌約40日間であった。しかし, F
1雑種の直線体重増加期間 (雄29.8日間, 雌19.0日間) は雌雄共に両親系統のおよそ中間 (BAN雄33.4日間, 雌26.1日間; NAG雄18.8日間, 雌13.9日間) であった。同様に, F
1雑種の直線体重増加期間における成長速度 (雄2.1g/day, 雌1.8g/day) も両親系統のおよそ中間 (BAN雄3.2g/day, 雌2.2g/day; NAG雄1.6g/day, 雌1.5g/day) あった。F
1雑種と両親系統における合計6つの雌雄別群のうち4群において, この成長速度と体重成長曲線の極大値との間に正の相関関係がみられた。したがって, 直線体重増加期間およびこの期間における成長速度がスンクスの成長パターンの遺伝的差異を表していることは明らかである。
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