Experimental Animals
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石炭灰短期吸入暴露によるゴールデンハムスターの肺内遊出細胞
根岸 正西村 泉
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1993 年 42 巻 1 号 p. 51-59

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抄録

石炭灰の吸入による肺内自由細胞の変化を明らかにすることを目的に, 雄のゴールデンハムスターを用いて短期暴露実験を行った。実験1では2, あるいは5mg/m3の濃度で1日20時間, 連続10日間の暴露を行い, 肺洗浄法で自由細胞を回収した。実験2では, 5mg/m3の濃度で1日10時間 (7日/週) の暴露を4週間行い, その後動物を清浄空気環境下で4週間飼育し, 自由細胞の組織学的計測を行った。これらの実験から, 異物の貪食とその消化により肺胞内を清浄に保つ機能を持った肺胞マクロファージ (AMs) の数は暴露濃度に依存して増加した。粒子を貪食したAMsの全AMsに対する割合も暴露濃度と暴露期間に依存して増加し, 暴露終了時には約80%となった。暴露停止後1週目にはAMs数はやや減少し, 粒子を貪食したAMsの割合も約20%に減少した。しかし, その後のAMsと粒子を貪食したAMsの割合の変化は少なかった。実験1の5mg/m3暴露群では暴露1日目に多数の好中球の遊出がみられ, その後一旦減少してから再び増加した。一方, 2mg/m3暴露群ではこのような一過性の増加は見られなかった。実験2では好中球数は暴露期間に依存して指数的に増加し, 石炭灰を貪食した好中球も出現した。また, 暴露停止後では好中球数は急激に減少し, 暴露停止後2週目には対照群のレベルに戻った。以上の結果から, 石炭灰の吸入によるAMsの増加は主に暴露濃度に依存しており, 粒子を貪食したAMsの一部は長期間肺内に滞留することが示唆された。また, 好中球の増加は粒子の負荷によって異なり, この細胞も粒子を貪食することが示された。

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© 社団法人日本実験動物学会
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