抄録
ラットの行動リズムは下垂体摘出後に不明瞭化し位相変位が認められることから, 生体リズム発現の中枢である視交叉上核 (SCN) は下垂体摘出による影響を受けるものと考えられる。そこで, 下垂体摘出がSCNニューロンに及ぼす影響について免疫組織化学的に追究した。実験にはWistar-lmamichi系雄ラットを用い, 60日齢にて下垂体を摘出した。そして10, 30および60日目に脳を灌流固定し, vasopressin, VIPおよびsomatostatin抗体を用いてSCNに対し免疫組織染色を施した。その結果, 下垂体摘出後10日目にはSCNのsomatostatinニューロンは検出されなくなったが, 30日目および60日目のSCNには僅かながらsomatostatine陽性細胞体の出現がみられた。一方, vasopressin, およびVIPニューロンには大きな変化はみられなかった。これらの成績から, 下垂体摘出はSCNにおけるsomatostatinの消失を惹起し, その結果, 行動リズムにも影響が及ぶことが示唆された。