抄録
近交系野生色マストミス (Pyaomys coucluz; MWC) を用い, 繁殖活動に注目して20例の雌を4例ずつ未経産・妊娠末期・出産2日後・哺乳中断・哺乳完遂の5群に分け, 主要器官重量と卵巣の組織像を比較した。妊娠すると肝臓・脾臓・卵巣の重量は増加したが, 腎臓・下垂体・副腎は変化しなかった。哺乳経験の有無では, 肝臓・腎臓・副腎・卵巣の重量に差がみられ哺乳群で大きかった。しかし脾臓・下垂体・子宮の重量に差はなかった。下垂体は出産2日後に最大値を示した。卵巣を組織学的に比較すると, 卵胞の成長と黄体の消長が重量の変化とよく同調していた。間質は未経産群で狭量であったが, 妊娠の間に拡大した。間細胞には, 空胞を伴い明るくみえる細胞と, これを欠き暗くみえる細胞の2型があり, 後者は妊娠後, 前者は哺乳中断でそれぞれ増加した。これらの変化は, マストミスの間細胞も副腎皮質の網状層や境界層を構成する細胞と同様特異な代謝系を有する可能性を示唆した。しかしその過程が副腎皮質では哺乳により依存しているのに対して, 間質では哺乳より妊娠とより密接に関連している点が異なっていた。