Experimental Animals
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異なる発生段階のマウス胚の同一受容雌への移植
上田 乙也鎌田 宣夫鈴木 宏志
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1994 年 43 巻 5 号 p. 679-685

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抄録

異なる発生段階のマウス凍結融解胚あるいは新鮮胚を同一の受容雌に移植した場合の着床および胎仔への発生を検討した。Jcl: ICR系あるいはFvB系の過排卵処理雌を同系の雄と交配し, Day1 (膣栓確認日=Day0) およびDay2に, 卵管および子宮を潅流して得られた2~4細胞期胚 (Day1胚) および8細胞期胚~桑実期胚 (Day2胚) をガラス化法により凍結融解した。正常な形態のDay1胚およびDay2胚を偽妊娠0日目のJcl: ICR系受容雌の左右の卵管に分けて移植し, 着床率およびDay17における胎仔への発生率を調べたところ, Day1胚とDay2胚の間に有意差は認められなかった。また, 着床率および胎仔への発生率は, Day1胚のみ, あるいはDay2胚のみを移植した対照群の成績と同様であった。また, 異なる発生段階の胚を同一受容雌に移植した場合においても, 胎仔には奇型や形態形成の遅れなどの影響は観察されなかった。新鮮胚に関しても, 異なる発生段階にある胚を同一の受容雌に移植したことによる影響は認められなかった。
以上の成績より, 同一受容雌に移植された異なる発生段階の初期胚は着床時期周辺で同期化され, 正常な胎仔発育に至ることが示唆された。このことにより, 特に凍結融解や遺伝子導入などの操作の後に発生段階の揃った胚が適当数得られない場合においても, 発生段階の異なった胚を同一の受容雌に移植することにより, 効率的に産仔を得ることが可能であると考えられた。

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© 社団法人日本実験動物学会
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