抄録
スギ大苗を植栽することで,シカによる主軸の食害を回避または軽減して樹高成長を継続できるか検証を行った。苗高の異なるスギ大苗を植栽し, 6年間の成長経過および主軸の食害状況を調査・解析した。その結果,苗高 155cm以上のスギ大苗のうち98%が,主軸の食害を全く受けないか(78%),主軸の食害を受けても伸長した側枝が新たな主軸に置き換わること(芯変わり)で樹高成長が回復した(20%)。そこで,平均苗高155cm以上のスギ大苗を 3箇所の実証試験地に植栽( 300本= 100本/箇所× 3箇所)した結果,60%が主軸の食害を受けなかった。 7%の大苗が主軸の食害を受けたが,すべて芯変わりによる回復により樹高成長は継続した。一方, 2箇所の調査地で主軸の先端部分に対する折損被害が発生した。折損被害は,全体の27%で発生し,最も被害が多かった試験地では77%の発生率だったが,被害個体の61%は,主軸の食害同様,芯変わりにより樹高成長は回復した。しかし,主軸の食害を受けなかった個体と比較して,樹高成長が 1~ 2年程度遅れる傾向があったため,今後の成長経過を確認する必要があると考えられた。