抄録
本試験では,育苗期におけるトルコギキョウ斑点病(Pseudocercospora nepheloides)の伝染源を明らかにするため,種子伝染の可能性および育苗施設内の生産資材の汚染実態について検討した。種子から斑点病菌を検出するためにITS領域の70bpの配列を増幅する種特異的プライマーを用いたPCR法を開発した。本法による検定を実施した結果,発病株由来の種子から斑点病菌を検出した。さらに,同種子および斑点病菌の分生胞子を粉衣した種子について,播種後の幼苗の発病状況を調査した。その結果,いずれも幼苗に発病を認めた。また,生産資材表面の付着物をセロハンテープにより回収し,光学顕微鏡で観察し,分生胞子の付着状況とその発芽率について調査した。その結果,セルトレイ,エキスパンドメタル,エアコンに分生胞子の付着を認め,発芽能力を有する分生胞子も認めた。以上のことから,トルコギキョウ斑点病は種子およびセルトレイ等の育苗施設の資材を介して伝染することが示唆された。