山田勇磨博士は,北海道大学大学院薬学研究科博士課程を中退し,筆者が主宰する同大学院薬剤分子設計学研究室の助手として2007年に着任した.その後2008年に博士(薬学)を取得し,同研究室の助教としてドラッグデリバリーシステム(DDS)を中心とする研究・教育に従事している.近年,ミトコンドリア(Mt)と様々な疾患との関連が明らかとなってきており,本オルガネラを標的とした薬物治療が注目されているが,疾患治療を実現するDDSは開発されていない.特に,タンパク質や核酸などの高次構造分子は堅固なMt膜を突破することが難しく,タンパク質治療・遺伝子治療の実現は非常に困難な状況にある.山田博士は同大学薬学部4年次に同研究室に配属されてから,現在まで一貫してDDSに関する研究に従事し,特にこのたびの受賞研究である「ミトコンドリア標的型ナノデバイス“MITO―Porter”の創製」に尽力してきた.以下に,受賞研究の概略を紹介する.