ファルマシア
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がん細胞で異常なタンパク質が作られる仕組みを「mRNA再スプライシング」現象から探る
亀山 俊樹前田 明
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2015 年 51 巻 1 号 p. 22-26

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抄録

がん細胞では,正常細胞には存在しない異常なタンパク質が多く作られているのはよく知られた事実である.それはがんで見られる遺伝子の突然変異だけでは到底説明できない.最近,私たちは「mRNA再スプライシング(mRNA re-splicing)」という全く新しい現象が,がん細胞で特異的に起こっていることを発見した.もしかすると,がんで異常な転写物やタンパク質が大規模に作られる原因かもしれない.そうならば,正常な細胞では,無分別なmRNA再スプライシングを抑える仕組みがあるに違いない.私たちは今,これらの興味深い仮説が正しいかどうかを検証している.
本稿では,まず遺伝子発現における必須過程であるmRNA前駆体のスプライシング(splicing)とは何か,という基本から説き,その重要性を最新データに基づきながら解説する.そして,実際にがんで起こっている異常スプライシングの実例を挙げ,私たちが成功したmRNA再スプライシング現象の証明を分かりやすく説明し,いま遂行中の研究と将来の展望について述べる.

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© 2015 The Pharmaceutical Society of Japan
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