ファルマシア
Online ISSN : 2189-7026
Print ISSN : 0014-8601
ISSN-L : 0014-8601
セミナー
集積ナノ構造と生体分子デバイス構築に向けたモジュール型RNAの人工改変
井川 善也
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 51 巻 1 号 p. 42-46

詳細
抄録

RNAはDNA類似の構造を持つ生体高分子として,遺伝情報発現の流れ(セントラルドグマ)において,DNA配列情報の読み出し(転写)の担体分子(mRNA)であり,ポリペプチドの配列への核酸配列の変換(翻訳)では,遺伝暗号に従う情報変換を担うアダプター(tRNA)として,またmRNAの3文字の配列情報(コドン)に対しアダプターを配列して隣接したアミノ酸間のペプチド結合形成を促す分子装置(リボソーム)の中核成分(rRNA)として働く.mRNAの役割が同種高分子のDNAに類似するのに対し,tRNAやrRNAは異種高分子のポリペプチドに類似した働きと捉えられる.
これら古典的RNAに加え,酵素機能(リボザイム)や分子認識機能(アプタマー・リボスイッチ)など,タンパク質に類似した働きをRNAが単独で実行する例が1980年代より多数見いだされた.またRNAが配列相補性により標的配列を認識する分子パーツ(ガイドRNA)として,ゲノムDNAやmRNAを配列特異的に制御(分解を含む)する分子装置に組み込まれている例が幾つも見付かっている(テロメラーゼやCRISPR/Cas9などのゲノムを標的とする分子装置,siRNA/miRNAなどのmRNAを標的とする分子装置).
こうしたRNA分子の二面的な特性(一次配列情報・立体構造の形成能力)は生命機能制御の様々な局面で利用されているが,本稿ではRNA分子の「立体構造の形成能力」に焦点を当て,テクノロジー展開の可能性を探る「つくるRNA生化学」の研究について,筆者らの研究を軸に紹介したい.

著者関連情報
© 2015 The Pharmaceutical Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top