2015 年 51 巻 2 号 p. 114-119
近年,糖鎖が結合したタンパク質,すなわち糖タンパク質がタンパク質製剤として広範に利用されるようになった.特に,エリスロポエチン,インターフェロン-β,そしてヒト型抗体などは,その活性発現に糖鎖が必要不可欠である.製剤に利用される糖タンパク質は,チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞を利用する発現法で調製される.しかし,この方法で糖タンパク質を発現すると,タンパク質部分の3次元構造は,ほぼ同じであるが,糖鎖構造については,糖の数,分枝数などが異なる構造異性体の混合物となる.この糖鎖に生じる構造不均一性は,ゴルジ装置内での糖鎖生合成が非遺伝子制御で進むことに原因がある.糖鎖の機能やその生合成過程は,未だ完全には理解されておらず,関連する研究は展開され続けている.