ファルマシア
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医薬品のプロに必要な学問を固有名詞で知ろう
小野 俊介
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2015 年 51 巻 7 号 p. 654-656

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抄録

「医薬品を研究し,候補を選択し,評価し,承認審査し,使用を調節し,社会における最適化を目指す.そのための科学が必要である」.このような記述をもって,その「科学」について何かを語った気になってはいけない.よく考えるとそれって何も定義していないし,中身もよく分からない.
新薬が社会に利益をもたらす一連のプロセスには,多くのプレイヤーが異なる私的意図で参加する.何の制約もなしに社会の幸せだけを考えているプレイヤーはいない.それゆえ,プロセス内での判断の基準もプロセスの文脈に応じて多様である.利害をめぐる交渉の帰結は単純に勝ち負けでは語れない.状況を分析し,「こうすべき」という何らかの規範的な意味で改善を図るには,その文脈に応じた学問が必要となる.単に学問の種類・数の問題ではない.それぞれの学問において,とるべき視点の高さも目的や意図に応じて決まってくる.
話はとてもややこしい.そうした科学に呼び名を与えてみても,ややこしさの本質は変わらないし,「では具体的に何を勉強すべきか」への答えにもならない.だから本稿では,読者が具体的に勉強すべき学問領域を固有名詞で紹介することにした.

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© 2015 The Pharmaceutical Society of Japan
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