工業的にも極めて重要なプロセスへと発展した遷移金属錯体による“触媒的水素化反応”は将来的なレアメタルの枯渇を考慮すると,その代替材料を戦略的に開発していく必要がある.このような背景下,Stephanらは有機分子での触媒的水素化反応の研究に取り組み,かさ高いルイス酸とかさ高いルイス塩基から成るfrustrated Lewis pairs(FLPs)が水素分子をプロトンとヒドリドへとヘテロ開裂を起こし,イミンやエナミンなどを水素化することを報告した.これまでに報告されたFLPsの多くはルイス酸にホウ素化合物を,ルイス塩基にはホスフィンやアミンを用いており,カルボニル化合物の水素化を指向した場合,ホウ素原子の高い酸素親和性のため,触媒的な水素化反応が困難であると考えられていた.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Stephan D. W., Erker G.,
Angew. Chem. Int. Ed., 49, 46-76 (2010).
2) Mahdi T., Stephan D. W.,
J. Am. Chem. Soc., 136, 15809-15812 (2014).
3) Longobardi L. E.
et al.,
Dalton Trans., 43, 15723-15726 (2014).
4) Scott D. J.
et al.,
J. Am. Chem. Soc., 136, 15813-15816 (2014).
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