2016 年 52 巻 11 号 p. 1058_2
薬物に生体内標的部位に指向する性質を与え,選択的な薬物送達を実現する試みをターゲティングという.生体の異物処理機構や解剖学的・生理学的特性など生体が自然な状態で備えている機能を受身に利用するパッシブターゲティングと,より積極的に特別の工夫をすることにより標的指向化を図るアクティブターゲティングとに分類される.がん治療における前者の例としては,EPR効果を利用したPEG修飾リポソームや高分子ミセルを利用したアプローチがあり,後者の例としては,モノクローナル抗体に抗がん剤や毒素を結合させた抗体-薬物複合体(antibody-drug conjugate:ADC)がある.