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静電粉末コーティング技術の医薬品製造への応用
近藤 啓太
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2016 年 52 巻 9 号 p. 885

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抄録

コーティング操作は,薬物の苦味マスキングや薬物放出速度の制御,耐防湿性の付与など,医薬品の機能化や安定性の向上を目的とする単位操作である.医薬品製造では,溶媒を用いる湿式コーティング法が汎用されており,一般に熱風中で転動や流動させた錠剤あるいは顆粒に対して,高分子溶液または懸濁液を噴霧することで行う.一方で,溶媒を使用しない乾式コーティング法は乾燥工程が不要かつ処理時間が短いため,ランニングコストが低く,さらに有機溶媒を使用しないため,環境負荷を軽減できるといった利点がある.乾式コーティング技術として,ワックスなどの低融点物質を混合被覆する手法や可塑剤を噴霧しながら高分子粉末を混合被覆する手法が以前より知られている.しかし,乾式条件でのコーティングは,原料粉体の付着凝集性などの物性に影響されやすく,適用可能な薬物とコーティング剤の組み合わせが限られるため,適用例が極めて少ないのが現状である.近年,医薬品製造に応用可能な新たな乾式コーティング技術として,静電気を利用して高分子粉末を被覆する手法が報告されたので紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Qiao M. et al., Eur. J. Pharm. Biopharm., 76, 304-310 (2010).
2) Qiao M. et al., Int. J. Pharm., 388, 37-43 (2010).
3) Qiao M. et al., Eur. J. Pharm. Biopharm., 83, 293-300 (2013).
4) Yang Q. et al., Eur. J. Pharm. Biopharm., 97, 118-124 (2015).

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© 2016 The Pharmaceutical Society of Japan
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