ファルマシア
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52 巻, 9 号
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目次
  • 2016 年 52 巻 9 号 p. 818-819
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/02
    ジャーナル フリー
    特集にあたって:近年,様々な分野で「大麻・カンナビノイド」が注目を浴びつつある.大麻はもちろん大麻取締法で規制される依存性薬物であるが,医療用大麻は日本以外では鎮痛や食欲増進,吐き気の緩和などを目的に使われているのも事実である.そこで本特集号では大麻草や内因性カンナビノイドシステムの現況をより深く知り,米国での医療用大麻使用や社会問題化した危険ドラッグの実情に迫るとともに,創薬標的としてカンナビノイドCB1,CB2受容体に焦点を当て,化学系・生物系・医療系など多分野の先生方にご執筆いただき,分野横断的な特集とした.
    表紙の説明:近年,大麻草(右下)に注目(一筋の光り)が集まりつつある.医療用大麻は世界では欠かせない医薬品になりつつあり,大麻の主要成分であるΔ9-THC(左手上の化合物)が特異的に作用するカンナビノイドCB1,CB2受容体(イラスト)は新たな創薬標的として研究が進むが,カンナビノイド受容体は危険ドラッグ(右手)の作用点でもあり,影の部分があることも否めない.
オピニオン
  • up-to-date
    山本 経之
    2016 年 52 巻 9 号 p. 817
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/02
    ジャーナル フリー
    大麻は、人類誕生以前から地球上に存在する植物であり、また繊維として、食物として、医薬品として人類が広く頻用してきた歴史がある。大麻の活性成分として精神作用の強いΔ9-THCや精神作用の弱いCBN等が同定され、カンナビノイドと呼ばれている。また体内にも大麻の活性成分と結合する特異な受容体の存在が明らかにされ、同時に内因性カンナビノイドも見つけられている。一連のカンナビノイドは、創薬としての新たなブレークスルーが期待できるか?
Editor's Eye
セミナー
  • 有用植物から危険ドラッグまで
    船山 信次
    2016 年 52 巻 9 号 p. 827-831
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/02
    ジャーナル フリー
    アサは古くから人類によって利用され、その繊維は一般に麻と書く。一方、単に麻というと種々の繊維が採れる異なる植物の総称であることから、アサを大麻と称することがある。大麻というと、「大麻取締法」で規制されているドラッグのイメージがあるが、大麻という言葉には本来悪い意味はない。
    ここではアサの来歴から、アサが大麻取締法にて規制されようになったいきさつ、そして、大麻吸引から派生した危険ドラッグの誕生とその正体について述べる。
セミナー
  • アサはなぜ・どのようにカンナビノイドを生産しているのか
    森元 聡
    2016 年 52 巻 9 号 p. 832-836
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/02
    ジャーナル フリー
    大麻の基原植物であるアサは、幻覚活性にかかわる化合物としてΔ9-tetrahydrocannabinolic acidを生産している。アサはなぜ・どのようにこのような成分を生産しているのか不明であった。様々な検討を行った結果、Δ9-tetrahydrocannabinolic acidはアサ中で細胞死誘導因子として機能することが明らかとなった。さらにΔ9-tetrahydrocannabinolic acidはcannabigerolic acidの酸化閉環によって生合成された。この反応を触媒するTHCA合成酵素であり、X線結晶構造を解析により、酵素反応メカニズムを詳細に解析することに成功した。
話題
  • その伝統,無毒大麻「とちぎしろ」の開発,そして現状について
    橋本 寿夫
    2016 年 52 巻 9 号 p. 837-839
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/02
    ジャーナル フリー
    鹿沼市は麻の生産量日本一の産地。優れた品質の「野州麻」を古くから全国各地に出荷してきた。しかし代替繊維の台頭などにより栽培面積は激減。幻覚成分が含まれる麻の盗難も相次ぎ野州麻が存続の危機に。そうした中、栃木県農業試験場が無毒麻「とちぎしろ」の生育に成功。現在も無毒性維持のための栽培を続けている。
    後継者不足から産地としての存続が危ぶまれているが、最近、麻の栽培技術継承の動きや付加価値を付けての商品化などの取り組みも生まれてきている。
最前線
最前線
セミナー
  • 綿引 智成
    2016 年 52 巻 9 号 p. 850-854
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/02
    ジャーナル フリー
    大麻草を乾燥または樹脂化した大麻には,カンナビノイド(CB)と呼ばれる60種類以上の活性成分が含まれ,古来より鎮痛や食欲増進等の目的で使用されてきた.しかし,陶酔感,短期の記憶・認識障害,または起立性低血圧を引き起こし,さらには依存性リスクも有することから,一部の国や州を除き大麻の医療目的使用は禁止されている.
    一方,1960年代に,大麻の主活性成分がΔ9-テトラヒドロカンナビノール(tetrahydrocannabinol:THC)であることが報告され,1990年代にはTHCの生体内標的分子としてカンナビノイド受容体タイプ1およびタイプ2(cannabinoid receptor type I and type II:CB1 and CB2)が同定された.さらに,CB受容体に対する生体内アゴニストとしてアナンダミド(anandamide:AEA)および2-アラキドノイルグリセロール(2-arachidonoylglycerol:2-AG)が発見され,それらに対する主要分解酵素がそれぞれ脂肪酸アミド加水分解酵素(fatty acid amide hydrolase:FAAH)およびモノアシルグリセロールリパーゼ(monoacylglycerol lipase:MAGL)であることも明らかとなっている(図1).
    本稿では,これらカンナビノイド系分子を標的とした医薬品開発状況を,各種データベースおよび文献情報からまとめたので概説する(表1).
話題
  • 内山 奈穂子, 花尻(木倉) 瑠理
    2016 年 52 巻 9 号 p. 855-859
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/02
    ジャーナル フリー
    2011年頃から,危険ドラッグが関与したと考えられる健康被害や自動車事故等の他害事件の報告が急増し,大きな社会問題となった.2016年4月時点で,医薬品医療機器等法下,指定薬物として規制されている物質数は2,343物質であるが,その中でカンナビノイド受容体に対し作用を有する合成物質群(合成カンナビノイド)の数は最も多く,全体の約40%を占める(包括指定を除く).本稿では,合成カンナビノイドの流通実態およびその法規制について解説する.
話題
話題
承認薬の一覧
  • 新薬紹介委員会
    2016 年 52 巻 9 号 p. 867
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/02
    ジャーナル フリー
    本稿では厚生労働省が新たに承認した新有効成分含有など新規性の高い医薬品について,資料として掲載します.表1は,当該医薬品について販売名,申請会社名,薬効分類を一覧としました.
    本稿は,厚生労働省医薬安全局審査管理課より各都道府県薬務主管課あてに通知される“新医薬品として承認された医薬品について”等を基に作成しています.今回は,平成28年6月17日付分の情報より引用掲載しています.また,次号以降の「承認薬インフォメーション」欄で一般名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果などを表示するとともに,「新薬のプロフィル」欄において詳しく解説しますので,そちらも併せて参照して下さい.
    なお,当該医薬品に関する詳細な情報は,医薬品医療機器総合機構の医薬品医療機器情報提供ホームページ→「医薬品関連情報」→「承認情報(医薬品・医薬部外品)」→「医療用医薬品の承認審査情報」(http://www.info.pmda.go.jp/info/syounin_index.html)より検索できます.
承認薬インフォメーション
  • 新薬紹介委員会
    2016 年 52 巻 9 号 p. 868-871
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/02
    ジャーナル フリー
    本稿では既に「承認薬の一覧」に掲載された新有効成分含有医薬品など新規性の高い医薬品について,各販売会社から提供していただいた情報を一般名,市販製剤名,販売会社名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果を一覧として掲載しています.
    今回は,52巻7号「承認薬の一覧」に掲載した当該医薬品について,表解しています.
    なお,「新薬のプロフィル」欄においても詳解しますので,そちらも併せてご参照下さい.
家庭薬物語
  • 本山 桜
    2016 年 52 巻 9 号 p. 872-873
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/02
    ジャーナル フリー
    効能効果:気分不快,口臭,二日酔い,宿酔,胸つかえ,悪心嘔吐,溜飲,めまい,暑気あたり,乗り物酔い
    成分分量:【有効成分】阿仙薬,甘草末,カンゾウ粗エキス末,桂皮,丁字,益智,縮砂,木香,生姜,茴香,l-メントール,桂皮油,丁字油,ペパーミント油.【その他の成分】甘茶,トウモロコシデンプン,バレイショデンプン,中鎖脂肪酸トリグリセリド,d-ボルネオール,香料,銀箔,アラビアゴム末.
    用法用量:大人(15才以上)1回10粒,(11才以上15才未満)1回7粒,(8才以上11才未満)1回5粒,(5才以上8才未満)1回3粒,1日10回まで適宜服用(上記は現在販売している「仁丹」のものを記載).
薬学を糧に輝く!薬学出身者の仕事
くすりの博物館をゆく
トピックス
  • 上田 善弘
    2016 年 52 巻 9 号 p. 878
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/02
    ジャーナル フリー
    アリールアミンは医薬品等に最もよく見られる構造の1つである.芳香環C-H結合を位置選択的に活性化し,C-N結合へと変換する方法は最も直接的であり,遷移金属触媒を用いる手法を筆頭に活発に研究されている.最近,Nicewiczらが光酸化還元特性を有する有機分子触媒を用い,芳香環C-H結合の直接的アミノ化法を報告したので紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Jiao J. et al., ACS Catal., 6, 610-633 (2016).
    2) Romero N. A. et al., Science, 349, 1326-1330 (2015).
    3) Morofuji T. et al., J. Am. Chem. Soc., 135, 5000-5003 (2013).
  • 伊藤 真二
    2016 年 52 巻 9 号 p. 879
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/02
    ジャーナル フリー
    ハイスループットスクリーニング(high throughput screening:HTS)は合成展開の種となるヒット化合物を効率的に見いだす手法として確立されているが,タンパク質との共有結合や化合物の凝集,アッセイ系におけるシグナル検出への干渉等に起因する偽陽性が結果の解釈を難しいものとしている.本稿ではイーライリリーのGaoらによるメチルトランスフェラーゼ(methyltransferase:MTase)阻害剤探索の事例を紹介し,偽陽性に惑わされずに真のヒット化合物を取得するための方法論について議論したい.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) McGovern S. L. et al., J. Med. Chem., 45, 1712-1722 (2002).
    2) Baell J. B. et al., J. Med. Chem., 53, 2719-2740 (2010).
    3) Gao C. et al., ACS Med. Chem. Lett., 7, 156-161 (2016).
  • 大竹 真弓
    2016 年 52 巻 9 号 p. 880
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/02
    ジャーナル フリー
    世界の農林業や家庭における植物由来の廃棄物量は年間1,400億トンにものぼる.これらはごく一部がエネルギー源として利用されるにとどまり,大部分は未利用のままである.このような植物廃棄物に付加価値を見いだし経済利用することができれば,それはまさに錬金術のような技術となり得るだろう.今回,Kuppusamyらは南オーストラリアにおいて採取した25種の植物廃棄物についての商業的有用性を検討したので,本稿で紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Kuppusamy S. et al., Ind. Crops and Prod., 83, 630-634 (2016).
    2) Hutzler P. et al., J. Exp. Bot., 49, 953-965 (1998).
    3) Southwell I. et al, “TEA TREE the genus Melaleuca”, Harwood Acad. Pub., Amsterdam, 1999, pp. 2, 169-186.
  • 能代 大輔
    2016 年 52 巻 9 号 p. 881
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/02
    ジャーナル フリー
    バクテリアマイクロコンパートメント(bacterial microcompart‐ment:BMC)は,正二十面体様のタンパク質の殻によって形成される,広く細菌類にみられるオルガネラである.内部に炭素固定に関連する重要な酵素類を含むカルボキシソームは,その代表例である.空間を区画化することで目的の反応に必要な酵素類の濃度を高め,反応を阻害する外部の要因から防御する役割を持つため,BMCは効率よく反応を行うナノリアクターとしての応用価値も見いだされている.BMCの殻の小平面は,主に単一の六量体形成シェルタンパク質BMC-Hにより形成されているが,シェルタンパク質がどのように自己集合して高次構造を形成するのかは未解明のままである.一方,高速AFM(high-speed atomic force microscopy:HS-AFM)は,生理的条件下に近い水溶液中でのタンパク質の動的挙動をリアルタイムで直接観察することが可能な装置である.これまでにアクチン上でのミオシンVの歩行運動や,回転軸を除いたF1-ATPaseの回転運動,バクテリオロドプシンの光励起による構造変化などの観察が行われた.最近Sutterらにより,高速AFMを用いて,BMC-H六量体の自己集合ダイナミクスが初めて観察されたので,本稿で紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Chowdhury C. et al., Microbiol. Mol. Biol. Rev., 78, 438-468 (2014).
    2) Frank S. et al., J. Biotechnol., 163, 273-279 (2013).
    3) Ando T. et al., Annu. Rev. Biophys., 42, 393-414 (2013).
    4) Sutter M. et al., Nano Lett., 16, 1590-1595 (2016).
  • 平本 正樹
    2016 年 52 巻 9 号 p. 882
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/02
    ジャーナル フリー
    ユビキチン・プロテアソームシステムは,タンパク質を迅速に分解・除去するシステムとして,細胞周期,シグナル伝達など,細胞内の重要なイベントに関わる.このシステムの破綻による不要タンパク質の蓄積が神経変性疾患につながる一方,がん細胞の増殖が当該システムの亢進によって維持されているケースも多い.分解されるタンパク質のユビキチン修飾については,その制御機構が詳細に解明される一方で,プロテアソームについては従来,受動的にタンパク質分解を担う安定的な構造物として考えられていた.近年,プロテアソーム自体の活性制御についても注目され始め,発現量,細胞内局在,翻訳後修飾に変化が生じることが判明し,リン酸化修飾も数多く報告されているものの,その生理的意義は不明であった.今回Guoらは,26Sプロテアソームの構成サブユニットRpt3の25番目のトレオニン(Thr25)におけるリン酸化修飾と,プロテアソーム活性制御および腫瘍形成との関連を報告した.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Guo X. et al., Nat. Cell. Biol., 18, 202-212 (2016).
    2) Turner N. C. et al., N. Engl. J. Med., 373, 209-219 (2015).
    3) Lokireddy S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 112, E7176-E7185 (2015).
    4) Myeku N. et al., Nat. Med., 22, 46-53 (2016).
  • 濱田(佐々木) 幸恵
    2016 年 52 巻 9 号 p. 883
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/02
    ジャーナル フリー
    記憶には,ものを覚えること(記銘),覚えていること(保持),覚えていることを想い出す(想起)という過程がある.記銘には,訓練によって何かを習得するという学習と内容的には同じであるが,感覚情報を知覚し,固定して,記憶痕跡とする過程が含まれる.最近では,記憶を情報処理的な観点から取り扱うことが行われており,記銘をコード化,保持を貯蔵,想起を探索と呼んでいる.これまでの研究では,それぞれの記憶過程で個別の神経回路単位が対応しているのか,また記憶を探索して想起するとき海馬以外の領域が関わるかについて実験的に明確になっていない.本稿では,Rajasethupathyらによって報告された,記憶想起に関わる前頭前皮質から海馬への投射経路の役割について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Rajasethupathy P. et al., Nature, 526, 653-659 (2015).
    2) Frankland P. W., Bontempi B., Nature Rev. Neurosci., 6, 119-130 (2005).
    3) Ressler K. J., Mayberg H. S., Nature Neurosci., 10, 1116-1124 (2007).
    4) Taylor S. F. et al., Biol. Psychiatry., 71, 136-145 (2012).
    5) Wilson S. J. et al., Nature Neurosci., 7, 211-214 (2004).
  • 石井 雄二
    2016 年 52 巻 9 号 p. 884
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/02
    ジャーナル フリー
    我々が持つDNAは環境化学物質,UV,放射線などの外因的要因と,活性酸素種などの内因的要因により日常的に損傷を受けている.様々な防御機構や修復機構を逃れたDNA損傷は突然変異を引き起こし,やがて発がんに結びつく.それ故,DNAの損傷を明らかにし,我々がどのような要因にさらされているかを知れば,がんの根本的な予防につながる.
    近年,松田らは脂質過酸化物や環境化学物質により生じたDNA損傷を網羅的に検出するDNAアダクトーム解析を開発した.本法はDNA塩基が損傷を受けて生じたDNA付加体が,質量分析計で効率的にデオキシリボース(dR)とのグリコシド結合を開裂することに着目し,dRに由来する116の質量差(ニュートラルロス)を生じる分子を網羅的に検出するものである.彼らは本法を用いることで,ヒト組織試料から様々なDNA付加体の検出に成功している.
    しかしながら,グアニンのN7位やアデニンのN7/N3位に損傷を受けたDNA付加体は不安定であり,dR部分が容易に加水分解を受けてしまうことから,従来のDNAアダクトーム解析での検出は困難であった.今回,StornettaらはOrbitrap型質量分析計を用い,これらのDNA付加体も検索可能な新たなDNAアダクトーム解析の可能性について報告したので紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) 松田知成ほか, J. Mass Spectrom. Soc. Jpn., 57, 301-304 (2009).
    2) Kanaly R. A. et al., Mutat. Res., 625, 83-93 (2007).
    3) Stornetta A. et al., Anal. Chem., 87, 11706-11713 (2015).
  • 近藤 啓太
    2016 年 52 巻 9 号 p. 885
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/02
    ジャーナル フリー
    コーティング操作は,薬物の苦味マスキングや薬物放出速度の制御,耐防湿性の付与など,医薬品の機能化や安定性の向上を目的とする単位操作である.医薬品製造では,溶媒を用いる湿式コーティング法が汎用されており,一般に熱風中で転動や流動させた錠剤あるいは顆粒に対して,高分子溶液または懸濁液を噴霧することで行う.一方で,溶媒を使用しない乾式コーティング法は乾燥工程が不要かつ処理時間が短いため,ランニングコストが低く,さらに有機溶媒を使用しないため,環境負荷を軽減できるといった利点がある.乾式コーティング技術として,ワックスなどの低融点物質を混合被覆する手法や可塑剤を噴霧しながら高分子粉末を混合被覆する手法が以前より知られている.しかし,乾式条件でのコーティングは,原料粉体の付着凝集性などの物性に影響されやすく,適用可能な薬物とコーティング剤の組み合わせが限られるため,適用例が極めて少ないのが現状である.近年,医薬品製造に応用可能な新たな乾式コーティング技術として,静電気を利用して高分子粉末を被覆する手法が報告されたので紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Qiao M. et al., Eur. J. Pharm. Biopharm., 76, 304-310 (2010).
    2) Qiao M. et al., Int. J. Pharm., 388, 37-43 (2010).
    3) Qiao M. et al., Eur. J. Pharm. Biopharm., 83, 293-300 (2013).
    4) Yang Q. et al., Eur. J. Pharm. Biopharm., 97, 118-124 (2015).
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