ファルマシア
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オピニオン
ヒトマイクロバイオーム研究とは?
服部 正平
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2017 年 53 巻 11 号 p. 1049

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抄録

人体には数百種・数百兆個の細菌が生息し、これらは“常在菌”と称され、一過的に感染症を引き起こす“病菌菌”とは区別される。その住処は口腔、胃、腸、皮膚など全身におよび、それぞれ異なった菌種や組成からなる固有の細菌叢が形成されている。常在菌の存在は19世紀末のコッホ・パスツールの時代から知られていたが、系統的な研究は50年ほど前からである。さらに、その約50年後の現在、常在菌叢は“マイクロバイオーム”と呼称され、ヒトの健康と病気を理解する上での必須な生命科学の一大研究分野に豹変した。この背景には大きな技術革新がある。従来の個々の菌の培養から全体像にせまるボトムアップ戦略に代わり、今日では、次世代シークエンサーと情報・統計学を用いたメタゲノム解析法により全体像を精密に把握するトップダウン戦略が確立されている。この戦略はヒトゲノム計画と同様であり、入手される大量の細菌データは、将来の様々な細菌叢研究の基盤となる。さらにこの分野が重要視されている理由として、様々な全身的な疾患と腸内細菌叢の構造異常(dysbiosis)の高い関連性がある。くわえて、この異常は疾患の要因であることが明らかとなってきたことである。またその反対として、健常者の糞便(腸内細菌叢)がある種の疾患を治療できる便微生物移植法が示された。すなわち、腸内細菌叢には健康と疾患にそれぞれ正と負に関与する菌種が存在し、これらの菌種の特定は新たな予防法と治療法の開発につながる。

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© 2017 The Pharmaceutical Society of Japan
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