ファルマシア
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品質確保可能な高含量3Dプリンター製剤の開発
上原 直人
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2018 年 54 巻 11 号 p. 1086

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抄録

錠剤は,服用性および利便性から患者に好まれており,医薬品の中で最も汎用されている剤形である.錠剤は,打錠粉末を打錠機にて,杵と臼を用いて圧縮することで製造可能である.さらに,製造方法も直打法や顆粒圧縮法等様々存在する.しかしながら,これらの方法は,原薬特性が錠剤品質に影響を与えることが多く,工程が煩雑になるという課題が存在する.
近年,打錠機ではなく,3Dプリンターを用いて錠剤を製造する研究が多く行われている.そして,2015年にアメリカのAprecia Pharmaceuticals社より,3Dプリンターを用いて製造された製剤である抗てんかん薬の「Spritam」がアメリカ食品医薬品局(food and drug administration: FDA)の認可を受けたと発表された.この製剤は,マサチューセッツ工科大学で開発された3Dプリント技術を応用して製造されている.それは,原薬入りの薄い多孔質の層を複数重ねていって錠剤を成形する技術であり,速溶性を実現している.さらに,3Dプリンター製剤のメリットは,ニーズに合わせて錠剤形状や服用量の変更が容易である点や,打錠機を用いた製造方法と比較して,造粒工程が不要となるため,簡便化にもつながる点であると考えられる.
3Dプリンター技術には,様々な製造方法が存在する.医薬品製剤の分野で広く検討されている熱溶解積層(fused deposition modeling: FDM)方式は,熱をかけた熱可塑性樹脂をノズルから押し出し,積みあげていく方法である.デメリットとして,製造時に加える熱が180℃以上と高温処理必要な場合が多く,熱に不安定な原薬を用いることができない点がある.さらに,原薬濃度が3Dプリンターの精度にも影響を与えるため,原薬濃度が50%以上と高い製剤の開発は難しいとされている.そこで本稿では,練合物を押し出す方式の3Dプリンターを使用することで,高温処理不要な高含量速溶性3Dプリンター製剤の開発を実現した研究について紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Katstra W. E. et al., J. Control. Release, 66, 1-9(2000).
2) Goyanes A. et al., Int. J. Pharm., 527, 21-30(2017).
3) Pietrzak K. et al., Eur. J. Pharm. Biopharm., 96, 380-387(2015)
4) Shaban A. et al., Int. J. Pharm., 538, 223-230(2018).

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© 2018 The Pharmaceutical Society of Japan
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