肥満は世界的に増加しており,健康上大きな問題の1つである.肥満者の脂肪組織では,interferon(IFN)-γを産生するT helper(Th)1細胞,interleukin(IL)-17を産生するTh17細胞や炎症性マクロファージが集まって,慢性的な軽度の炎症状態となっている.近年,発展途上国における寄生虫感染者数は減少し,一方でアレルギー,自己免疫疾患やメタボリックシンドロームの患者数は増加している.両者に相関が認められることから,これらの疾患に対して寄生虫感染が防御の役割を果たしているのではないかと考えられる.寄生虫感染はIL-4を産生するTh2細胞,免疫応答を調整しているregulatory T(Treg)細胞の応答を誘導し,Th1細胞およびTh17細胞の応答に対する抑制に関与している.
マクロファージは炎症性サイトカインを産生するM1型と抗炎症性サイトカインを産生するM2型があり,寄生虫感染はTh2細胞が産生するサイトカインを介してM2マクロファージを誘導する.
しかしながら,寄生虫感染が肥満を調整するメカニズムは,まだ完全には明らかにされていない.Suらは,高脂肪食を摂餌した肥満マウスでの寄生虫感染の効果と,寄生虫感染により誘導されたM2マクロファージがエネルギー消費の調節に重要な役割を果たしていることを報告したので紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Guigas B., Molofsky A. B.,
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31, 435-441(2015).
2) Zaccone P.
et al.,
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3) Su C. W.
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4) Su C. W.
et al.,
Sci.
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8, 4607(2018).
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