ファルマシア
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妊娠は抗TNFα抗体薬の母体血中濃度を変化させる要因となるか
柴田 海斗
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2018 年 54 巻 3 号 p. 258

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抄録

潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)は若年時に多く発症するため,女性患者では薬物治療を継続しながら妊娠・出産を迎えることがある.抗腫瘍壊死因子(TNF)α抗体薬のインフリキシマブおよびアダリムマブはIBDの難治例に使われており,妊娠中も治療を継続することで流産や低出生体重児の出産の危険性が低くなることが報告されている.一方,これらの薬剤はIgG1モノクローナル抗体であるため,胎児性Fc受容体(FcRn)を介して胎盤を通過することが知られている.出産前に抗TNFα抗体薬の投与を中断しているにもかかわらず,臍帯血や出生児の血液中から高濃度の薬物が検出されたとの報告もある.このような背景から,妊娠中の抗TNFα抗体薬の使用によって出生児の免疫力が低下し,感染などを引き起こすことが危惧されている.抗TNFα抗体薬の胎児・出生児への移行性に関する研究は多く行われているが,妊娠期間における移行性と母体血中濃度との関係に着目した報告はほとんどない.そこで本稿では,妊娠中のIBD患者を対象に,インフリキシマブおよびアダリムマブの体内動態に関する前向き臨床試験の結果について紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Nguyen G. C. et al., Gastroenterology, 150, 734-757(2016).
2) Julsgaard M. et al., Gastroenterology, 151, 110-119(2016).
3) Seow C. H. et al., Aliment. Pharmacol. Ther., 45, 1329-1338(2017).
4) Malek A. et al., Am. J. Reprod. Immunol., 36, 248-255(1996).

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© 2018 The Pharmaceutical Society of Japan
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